イギリス海岸は姿を見せるのか??

平成20年9月21日(日)は宮沢賢治の命日です。今年はその日に合わせて面白い試みが行われました。銀河鉄道の夜のプリオシン海岸のモデルになったイギリス海岸を一時的に出現させようという試みです。

イギリス海岸は、北上川と支流猿ヶ石川の合流点から南にかけての北上川西岸に、イギリスのドーバー海峡に面した白亜の海岸を連想させる泥岩層が露出することにちなみ、宮沢賢治が「イギリス海岸」と名付けました。
渇水など川の水位が特に下がった時にしか見られず特に近年は河川管理技術の向上などからほとんど見ることができなくなりました。

今年は賢治の命日に国土交通省北上川ダム統合管理事務所の粋な計らいで北上川の上流にある盛岡市の四十四田ダム、御所ダム、花巻市東和町の田瀬ダムの放水量を発電に最低限必要な量に抑え、一時的に「イギリス海岸」を出現させようというものです。

バタグルミの化石


宮沢賢治は、農学校の教諭時代このイギリス海岸をよく訪れ、その際に発見されたのが「バタグルミ」の化石です。
「童話銀河鉄道の夜」のプリオシン海岸の場面には次のように書かれています。

「おや、変なものがあるよ。」カムパネルラが、不思議そうに立ちどまって、岩から黒い細長いさきの尖ったくるみの実のようなものをひろいました。
「くるみの実だよ。そら、沢山ある。流れて来たんじゃない。岩の中に入ってるんだ。」
「大きいね、このくるみ、倍あるね。こいつはすこしもいたんでない。」
             〜〜中略〜〜
「くるみが沢山あったろう。それはまあ、ざっと百二十万年ぐらい前のくるみだよ。
ごく新らしい方さ。ここは百二十万年前、第三紀のあとのころは海岸でね、この下からは貝がらも出る。

まさに、このイギリス海岸がプリオシン海岸のモデルになったことが分かると思います。
バタグルミは、学名ジュグランス・シネレヤ(Juglans cinerea)、新第三紀行の中新世〜鮮新世(2,500万年〜200万年前)
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花巻を訪れた東北帝国大学地質古生物学教室の早坂一郎助教授を案内して、イギリス海岸でバタグルミの化石を採集しました。
もともと賢治は、この場所でバタグルミの化石を発見して岩手師範学校教諭心得の鳥羽源蔵に送っていましたたが、鳥羽源蔵はから早坂助教授にそのバタグルミの化石を送っていました。まだ日本の学界に発表されていない貴重なものと判明。

そこで早坂助教授は実地調査をするためにやって来たのです。賢治は参考資料をそろえ説明案内役を務めました。翌年、早坂一郎は「地学雑誌」に論文「岩手県花巻町化石胡桃に就いて」として発表をしています。

ところで当日はイギリス海岸は出現したの?


当日の9月21日は曇り空。昼前から小雨がパラパラと・・・・・
イギリス海岸が出現しているかどうか不安を抱きつつ、とりあえず自宅から車で5分のイギリス海岸へ。
夜から賢治祭があることや、イギリス海岸が出現するかもしれないということでたくさんの観光客や地元の人達で賑わっていました。

肝心のイギリス海岸の水位といえば、残念ながら昼ごろの小雨が響いたのか、あと10cmで泥岩層が見えるところまで下がったのですが、見ることができませんでした。

でも、その泥岩層の上に立って何やら採取しているおじさんがいるではありませんか!
そのおじさんに「すみませ〜ん、何採ってるんですか?」と尋ねたみたところ「バタグルミだよ」とのこと。
「大変あつかましいお願いですが、少し分けてもらえませんか」とお願いしたところ「形が完全なものは無いが」ということで快く分けていただきました。そのおじさんに感謝感謝です。(右写真)

そのおじさんによるとこの日の水位は普段より50cmから80cmぐらい水位が下がったということです。
今回の試みは来年も行われるのかはわかりませんが、是非ともやってもらいたいものです。
来年こそは長靴を準備して「バタグルミ」を採取してみたいと思います。


宮沢賢治と花巻特産品の店 イーハショップ

 

 

 

渇水時のイギリス海岸
渇水状態で見ることができるイギリス海岸
写真提供:花巻市

 

バタグルミの化石
バタグルミの化石
(当日化石を採取している方からのもらい物)

バタグルミの化石のレプリカ
イーハショップで販売している
バタグルミのレプリカ


泥岩層まであと10cm